東京労働局主催「違法派遣における申込みみなし制度」に関するセミナーを開催しました。

講師は、厚労省職業安定局、派遣・有期労働対策部需給調整事業課長、富田望氏。

たんたんと進んだ解説の中、同氏が強調していたのが「本制度がなぜ導入されたのかと言う理由を理解してほしい」ということでした。

これはまさしく「制度趣旨」の重要性を指摘したものに他なりません。

これまでの派遣法にも労働者保護の対策は存在していました。

しかし、たとえば、(1)派遣法40条の4による労働契約申込み義務の規定は、実務上あまり効いていなかったと言われます。

また、(2)行政指導中心のやり方では制裁の面が弱いという問題もありました。

さらに、(3)派遣元への行政処分もたしかに効果はあるのですが、これが行き過ぎると、そこに雇用されている派遣労働者が失職する懸念があります。

つまり現状は不十分なのです。

そこで平成24年派遣法改正で規定され、この10月1日から発効するのが本制度ということになります。

さて、当日配布された資料の7枚目をご覧ください。

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タイトルは「制度の趣旨」です。

大きくとらえると、違法派遣の是正に当たって派遣労働者の雇用の安定を図りつつ、民事的な制裁を科すことにより、制度の実効性を高めようとした、という内容が書かれています。

つまり、現行の対策には前記(1)(2)(3)等の問題点があるため、これを解消させるためにこの内容を重視して本制度を設計したのだということになります。

これが「制度の趣旨」です。

では、この趣旨が制度のどのあたりに反映されているかを二つほどあげてみましょう。

第一は、違法派遣が行われているとしても、派遣先としてそのことを知らず、あるいは知らなかったことについて過失がない場合は、本制度は適用されないということです。

なぜこんな条件を付けるのか?

私たちの社会では「契約自由の原則」が妥当しており、契約を結ぶかどうか、その内容をどうするかなどに関しては当事者間の自由に任されています。

これに対して本制度は、派遣先の意思に関係なく、「申込みがあったとみなしてしまう」のですから、非常に強力であり、制裁的側面がありありと窺われます。

したがって、派遣先に落ち度がない場合にまで申込みをみなしてしまうのはあまりに酷だということになります。

そこで、前述の条件を付して制度が適用される局面を限定したわけです。

ちなみに、この資料を見ると「善意無過失の場合を除き」申込みがあったとみなすとしています。

「無過失」はわかるとしても、なぜここで「善意」などという言葉が出てくるのか奇異に思われる皆さんもいることでしょう。

これは法律を学んだ方ならご存知の用語法ですが、法律上で善意とは、ある事実を知らないことをいいます(反対に、知っていることを「悪意」といいます)。

道徳的な意味合いはありません。

「違法派遣の事実を知らない=善意」ということになります。

さて第二です。

当日の資料の21枚目に、(留意事項)というのがあります。

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ここでは、派遣先が派遣労働者に対して「申込みみなし制度というのがあるのだけれど、これは使わないでほしい」と要請して合意した場合の、その合意の効力が問われています。

これについては、本制度に関する派遣法40条の6をみても言及はありません。

それどころか、私たちには「契約自由の原則」があるのですから、どんな内容の合意も可能なはずです。

「みなされた申込みに対して承諾はしません」と当事者間であらかじめ約束したのなら、それを認めてもいいようにも思えます。

しかしながら、本資料では「派遣労働者があらかじめ『承諾をしない』と言っていても、それに基づく合意は無効」としています。

なぜか? もう一度「制度の趣旨」に立ち返りましょう。

そこには民事的制裁を科すとあります。

要するに、違法なことをする派遣先に対してお灸をすえるわけです。

もしも前述の合意も有効だとしてしまうと、お灸の意味がなくなってしまいます。

ここは違法派遣撲滅と派遣労働者の雇用安定という目的を確実に達成させるため、制裁の意味が強める方向で解釈する必要があり、したがって、かような合意は無効だと考えることになるのです。

「制度趣旨」というものが制度の理解を促し(第一)、また解釈上の指針にもなることがわかります(第二)。

今回のセミナーは、求めようと思えばさらに求めたい部分もありましたが、条文の表面をなぞるだけでなく、その根本にある「制度趣旨」の重要性に光を当てた点に関しては、非常に意義があったと思っています。

派遣の仕事

「律速」という言葉をご存知でしょうか?

読み方は「りっそく」です。

パソコンで打ち込んでみてください。

変換されない場合もあります。

ちなみにスマホで検索してみると、こちらはサジェスト機能で「律速」が現れました。

「律速」は理科系の方にはおなじみでしょう。

どんな意味なのでしょう?

律速は化学工学における反応速度論で使われる言葉だとされます。

例を挙げます。

いま、Aという物質からBを作り、さらにそのBを反応させてCを作るとしましょう。

そしてこのときの状況が以下であるとします。

第一工程(AからBを作る):比較的速く反応が進む
第二工程(BからCを作る):比較的ゆっくり反応が進む

最終目的はCを作ることにあります。

それでは、そのCをなるべく速く作るために、第一か第二のどちらかの工程のスピードを速められるとしたら、どちらを上げるのがより効果的でしょうか?

第一工程のスピードを速めたらどうか?もともと速かった反応速度がさらに上がり、Bがたくさんできます。

しかしながら、第二工程のスピードが変わらないので行き詰まってしまい、結果として全体的スピードは上がらず、Cの出来上がりが速くなることはありません。

反対に、第二工程のスピードを上げればどうかといえば、BからCへの移行がスムーズになり、最終的にはCのでき上がりが速くなります。

工場でいえば生産量増加を意味します。

この場合において、全体スピードへの影響度が高い工程のことを「律速」というのです。

一般的には、反応の遅い工程のスピードを上げるほうが全体のスピードに影響を与えるので、遅い工程のほうが「律速」になります。

さて別の話。A4一枚の原稿を100枚コピーし、それを半分に折る作業を行うとします。

コピー1枚にかかる時間を2秒、折り作業も1枚あたり2秒かかるとしましょう。

このとき、まず100枚コピーした後でそれを折り始めるとすると、コピー時間は200秒、折り作業時間も200秒で合計400秒かかります。

ではやり方を変えて、まず50枚分のコピーができた段階でそれを取り上げ、コピー機にそのままコピーさせながら折り作業を始めます。

50枚分のコピー時間は100秒で、折り作業時間も100秒かかりました。

残りの仕事として50枚のコピーと50枚の折り作業が必要ですが、50枚のコピーについては、折り作業のあいだにコピー機が終えてますので、すぐに残り50枚の折り作業にかかることができます。

そうすると、最初の50枚のコピーが100秒、最初の50枚の折り作業と残り50枚のコピーは同時進行なので100秒、そして残りの50枚の折り作業が100秒で終わり、総時間は300秒で済みます。

なぜこのような話をしたのか?

現在、東北地域では大震災後の復興作業が行われており、とくに福島県では除染作業の人材集めが活発になっています。

このため、多くの業者さんが作業員募集の広告を出しています。

建設業もあれば請負業もあり、相互関係もあることでしょう。

さて、なんとかして集めたのはいいのですが、問題が発生しています。

受け入れる側の体制がきちんと整っておらず、たとえば、放射線関連の健康診断等で多大な時間が取られるような事態が生じているのです。

せっかく除染作業に立ち向かおうと手を挙げられた方々がウェイティング状態になっているわけです。

律速の判断違いというか作業手順の齟齬というか、基本的な計算違いが起きています。

作業遅れのロスもさることながら、働くことで生活の糧を得ようとする方々のことを考えると、より丁寧な工程組みをすべきだったと思うのです。

この方々が一定期間での作業を終えたあかつきには次の仕事探しも必要になりますが、今回の事態を考えると、その段階の準備もしておかないと、同様の問題が発生する恐れがあるように思えます。

労働生産性という言葉があり、日本人のそれはOECD各国の中でも20位内外と低位にランクされているようです。

個人的経験ですが、海外のビジネスマンの仕事振りに触れた際、とくに段取り段階で時間をかけるところとそうでないところのメリハリがあるなあとの印象を持ったことがありました。

このあたりの改善が必要なのではないかと思います。

ビジネススキル

キャリア形成支援には、コーディネーターのスキルアップがかかせません。

派遣法改正法案の雇用確保措置を果たすためには、営業スタイルを変える必要があるのです。

派遣会社の営業は、派遣先からオーダーをとってくる活動を得意としています。

登録者が多く確保できる時はそれでも良かったのですが、今では「オーダーを取ってくるものの、人選ができず、成約できない」そんなケースが増えています。

本来、派遣会社の営業は、求職活動をしている登録者が希望する派遣先を開拓するのが主たる業務でした。

オーダーは、求人広告で登録者を集めるものであって、集まってくる登録者すべてにその仕事を紹介できるものではありません。

そのため、登録会で、コーディネーターが登録者の情報をできるだけ詳しく収集し、その人物像を営業に伝え、それぞれの人にあった派遣先を開拓するというのが、派遣会社の業務フローだったのです。

それが、いつの間にか、営業が登録者という存在を忘れてしまい、派遣先の要望を満載したオーダーばかりとってくるようになってしまったのです。

私が30年間派遣業界を見てきて感じる営業スタイルの変遷です。

登録者がたくさんいて、選り取り見取りの状態であれば別かもしれませんが、今は、人材が集まりにくい人手不足期です。

それこそ、ひとりひとりに丁寧なマッチングが派遣会社に求められていると思いませんか?

派遣法改正法案は、それを見越したかのように、雇用確保措置とキャリア形成支援を派遣会社に求めています。

優良派遣事業者の認定基準も同様です。

今後、登録者だけでなく、派遣労働者が3年の期間制限を満了した場合、派遣会社は、希望する者すべての者に対して、雇用確保措置が義務付けられます。

その措置の中で、中心となるのが、「他の就業機会の紹介」です。

今働いている派遣労働者の希望とキャリアアップが可能な派遣先を探し出して、マッチングさせなければ、その義務を果たせなくなるのです。

まさに、派遣労働者を深く理解して、その派遣労働者を他の派遣先に売り込まなければならないのです。

そこで、重要なのが、コーディネーターの力です。

3年間就業した経験や評価を分析し、適職を探し出していくことや次の就業に際し必要な資格があれば、それをどのように取得してもらうかなどの相談にものっていく必要があります。

このことは、稼動者だけでなく登録者にも必要なことです。

そのためには、登録時点での面談が重要になります。

どれだけ深く情報収集ができるか、コーディネーターは、この面談力が問われてくるのです。

コーディネーターの面談は、採用活動の中で最も重要な行為といっても過言ではありません。

いい面談ができなければ、スタッフは、別の派遣会社で就業してしまいます。

では、いい面談とは、どのような面談を指すのでしょうか?

一言で言えば、派遣スタッフと信頼関係が築ける面談ということになります。

もう少し、具体的にいうと、スタッフが、「このコーディネーターは信頼できる、自分の仕事をこの人に探してもらおう」と思ってもらい面談が終了できるかどうかです。

しかし、どんな面談を行えば、そうなるのか、多くのコーディネーターの方がわからないのです。

そのためには、いくつか必要な技があります。

さらに、コミュニケーション能力なども必要になります。

派遣の仕事

派遣法改正の審議が再開され、ふたたびニュースにも現れてきています。

やはり重要な事がらですので、今週は二点ほど記しておきます。

1.現行法の動き

いわゆる違法派遣が放置されている事例に関しては、「派遣先による派遣労働者に対する労働契約申込みみなし制度」が10月1日から発効します。本年7月10日には下記の通達が出されています。

http://goo.gl/OTruxo

体裁としては、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込みをするものとしてみなしてしまう制度となっています。

「派遣労働者が『申し込んだら』、派遣先としては『承諾したものとみなす』」とはなっておらず、いきなり派遣先において申込みをしたものとしてしまうのですから、より直接的であり、いわば派遣先に対する制裁の意味が込められているのでしょう。

ところで、派遣先にとって厳しい制度であることは確かですが、派遣元としても、そのような制度の存在を正確に理解し、派遣先とともに対応策を講ずることが信頼関係強化のために必要です。

2.改正案の動き

審議が遅れていた改正案についてですが、当初の9月1日施行が厳しくなったため、9月30日施行をめどに調整されているとのことです。

実務的には、もう改正を折り込んで動く必要があります。

要点は以下です。

(1)従来の政令(専門)業務になるかどうかで派遣期間を区分する制度は撤廃されます。
(2)派遣期間の算定基準が業務単位から人単位に変ります。
(3)同じ職場で同じ派遣労働者を受け入れる期間は最長で三年です。
(4)この期間は、過半数組合等からの意見聴取を受けた場合には、人を替えることによって延長が可能です。
(5)ただし、派遣元との契約が無期雇用の派遣労働者、60歳以上の高齢者、日数限定業務、有期プロジェクト業務、育児休業の代替要員などの業務の場合は三年間の期間制限は適用されません。
(6)特定派遣制度が撤廃され、事業はすべて許可制となります。
(7)派遣終了後でも派遣労働者がさらに就業機会を得ることが望ましいため、雇用安定措置を講ずる必要があります。
(8)派遣労働者のキャリアアップを図るため、段階的・体系的な教育訓練を行うことが義務化されます。

仮に改正案が成立して政令指定業務派遣制度が撤廃されても、従来の契約については、しばらくのあいだは事実上本制度が継続します。

そして、継続する以上は、「本業務は、たしかに政令指定業務に該当するものかどうか」という判断はありうるわけです。

現在の契約内容、業務実態を再度確認し、トラブルのないように心がけましょう。

派遣の仕事

読売新聞は、7月26日、政府・与党が派遣法改正法案を施行延期する方針を固めたと報じました。

6月19日に衆議院を通過し、7月8日から参議院で審議が開始された派遣法改正法案ですが、審議が進まず、当初予定していた8月上旬の成立が危ぶまれています。

改正法案の成立から施行までには関連する政省令の整備や労働政策審議会への報告などの手続きのため一定の期間が必要で、9月1日に施行させるためには、8月上旬が法案成立のデッドラインと見られています。

参議院では、7月30日から本格的な審議に入ることが確認されていますが、8月上旬に成立させることが事実上難しい状況です。

そのため、先週から施行日の延期が取りざたされていましたが、ここにきて、9月1日の施行は間に合わないと判断したようです。

しかし、以前から指摘しているように、派遣法改正法案を9月中に施行させないと、雇用の現場が混乱する恐れがあります。

それが、10月1日に施行される「労働契約申込みみなし制度」の存在です。

「労働契約申込みみなし制度」が施行されると、派遣先が、
①適用除外業務に派遣労働者を従事させる場合
②無許可・無届の派遣元事業主から労働者派遣を受け入れた場合
③派遣受入期間制限に違反して派遣を受け入れていた場合
④いわゆる「偽装請負」当の場合

のいずれかの重大な違法派遣を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先から派遣労働者に対して、労働契約の申込みをしたものとみなされることになります。

もし、派遣法改正法案が10月1日以降に施行されることになると、派遣期間の制限がない26業務において、本来の業務と関係のない「お茶だし」などをさせていた場合、派遣受入期間のある業務となり、企業が派遣社員を直接雇用するよう求められる可能性があるなど、雇用の現場が混乱する恐れがあります。

また、直接雇用を嫌う派遣先が、9月末日で、派遣社員との契約を打ち切る事態も想定されています。

こうした、混乱を回避するため、今回の派遣法改正法案では26業務の区分そのものを廃止することを盛り込んだのです。

7月28日に開かれた参議院厚生労働委員会の理事懇談会での話し合いでは、

『改正法案は「9月1日施行」となっているが、そのための成立期日は「8月4日から5日が限界」と見込まれており、8月6日に名古屋市で地方公聴会(参考人招致)に日程が組まれたことで、近く「施行日修正」を提案する公算が高まった。』

ということです。

まだ、公式な発表ではないものの、新しい施行日は、9月30日で調整されるようです。

尚、法律案の施行日を変更した場合、参議院での可決後、衆議院に戻して本会議での議決が必要となります。

いよいよ派遣法改正法案は、成立に向けて最後の山場に指しかかったようです。

これだけ注目されている派遣法改正法案ですが、まだ内容を十分理解されていない方が多いようです。

「概要は知っている」程度では、派遣先の質問に答えることができません。

さらに派遣会社にとっては、雇用確保措置やキャリア形成支援制度の構築が義務付けられるなど規制強化の側面が強い改正内容です。

早い段階から対策を練っておかないといざ施行されてから対応しようとしても間に合いません。

派遣の仕事

契約における基本ルール「契約自由の原則」。

私たちの社会では、契約をするかしないか、するとして、誰とどのような契約をするか、それらはすべて当事者間の自由に任されています。

その根本には、お互いが納得のもとで自由に物事を決めていけば通常は十分に事が運ぶのであって、法律の力を借りなくてもたいていは大丈夫なのだということがあったわけです。

民事法定利率という制度があります(民法404条)。

ある当事者間で金銭100万円の貸し借りをする契約を締結したとします。

そして当然、利息を付けることにもなっていたのですが、その利率について定めていなかったらどうでしょう?

利息はまったくとれないのでしょうか?

それは変ですね?

普通の感覚で考えた場合、貸し借りをする以上、利息を払うのは当然のことです。

こういうときのために存在するのが民事法定利率の制度です。

そこでは、利息をつけるはずの契約において利率について特段の定めがない場合、その利率は年利5%とするとなっているのです。

では、このケースで、当事者間の取り決めで利率を高めの7%にしたり、逆に安めの3%にしたりすることはダメなのかというと、それはそれでOKなのです。

これも「契約自由の原則」の一環といえます。

当事者間の契約で法律の内容とは異なる内容の取り決めができる。

このように、当事者間の契約で法律の内容とは異なる内容の取り決めができる場合、その法律の規定のことを「任意法規」といいます。

契約自由の原則がこんなにハバを利かせているなら、これを理屈に利率を年利30%にすることは可能でしょうか?

「さすがにそれはあまりに不当で許してはならないのではないか?」と思われた方は正常です。

いわゆるサラ金、ヤミ金に手を出して悲惨な目に遭う多数の事例があることは皆さんご承知のところです。

弱い立場につけこんで非常に高率な金利設定を行うことは許されません。

これに関係する法律があります。

利息制限法です。

貸し借りの金額によって利率の上限が定められています。

たとえば金銭100万円以上の貸し借りを行った場合、その利率の上限は15%と定められています(同法1条)。

この上限数値は、当事者間の自由な取り決めをしたとしても変えることはできません。

このように、当事者間の自由意思をもってしても勝手にその内容を変えられない法律の規定のことを「強行法規」といいます。

民事法定利率の制度は「忘れたときのための備え」的なものであったため、当事者間できちんと決めてあるのであれば、変えても良かったわけです。

これに対し利息制限法による上限利率制限の規定は、いわば社会問題の撲滅という公益的要請から発したものなので、勝手には変えられないのです。

当事者間の自由な取り決めを超えて、雇用継続が義務付けられたり、雇用の申込みや承諾あったとみなされたりすることが如何に重要なことなのか、みなさんも考えてみましょう。

派遣の仕事

派遣法改正の反対派の多くは「派遣法改悪論」を訴えています。

知っている人が読めば、不思議に思う内容のものが多く書かれていたりします。

派遣業界としても、なかなか反論もできていなかったように思います。

それがこの派遣法改正の元凶なのかもしれません。

派遣業界は大きく変わり、かつ派遣会社の責務も高まります。

派遣業界が変わるのではなく、私たちが変えていくのです。

派遣の仕事

ディーセントワーク(Decent work)という言葉を知っていますか?

一般の方には、まだ聞きなれない言葉かもしれません。

労働関係の研究者やビジネスでの専門家であればよく使われる言葉です。

日本語訳は「働きがいのある人間らしい仕事」とされ、厚労省も以下の四つを示しています。

1.働く機会があり、持続可能な生計に足る収入が得られること

2.労働三権などの働く上での権利が確保され、職場で発言が行いやすく、認められること

3.家庭生活と職業生活が両立でき、安全な職場環境や雇用保険、医療・年金制度などのセーフティーネットが確保され、自己の鍛錬もできること

4.公正な扱い、男女平等な扱いを受けること

この言葉は、人材ビジネスにおいては、どうしても「正規・非正規」との関係でクローズアップされます。

雇用形態から整理すると、

正規雇用とは、直接雇用、無期雇用、フルタイム雇用という三要素を満たしているものだとされ、反対に、雇用契約先と指揮命令を受ける仕事先が異なる間接雇用(典型例が派遣)、雇用期間の定めのある有期雇用、就業時間に限定のあるパートタイム雇用などは非正規雇用に分類されてきます。

そして日本では、正規雇用こそディーセントワークなのだとしているように思えます。

派遣制度をみても、

「間接雇用である派遣はディーセントではない、例外的働き方です。だからこれを規制し、直接雇用を侵害しないように、また派遣労働者も正社員になれるように制度を作っているのです」

としている感じです。

現実にも、派遣はワーキングプアの象徴のように言われてきました。

たしかに派遣にはディーセントではない部分があったのでしょうし、そうなりがちなことは構造的に否定できません。

しかしながら、ディーセントの核心は、このような雇用形態からの正規・非正規の別にあるのではありません。

重要なのはその内容です。

たとえば上記厚労省による3.には「家庭生活と職業生活の両立」という文言があります。

これなどは、派遣やパートだからこそ実現しやすいという面もあるでしょう。

自ら望んでこのような働き方を望む人もいるわけです。

「いや、それは派遣制度が必要悪として存在するからであって、ほんとうはなくすべきなのだ」

という意見もありますが、すべてを直接雇用にすることが困難な経済環境の中で派遣の効能にいっさい目を向けず即座に捨て去るわけにもいきません。

派遣とディーセントを考えるなら、派遣の仕組みそのものを洗い直してから検討するべき必要があります。

そこまでいかなくても、現行法制や改正法においてさえ、派遣のなかにはDecentな部分があると考えます。

それを伸張し、現実的にも効能が明らかになる制度に育てていくことが重要です。

派遣の仕事

年金に関する個人情報の流出がありました。

所管官庁は厚労省です。

こちらの問題がクローズアップされたため、同じく厚労省が携わる派遣法改正の審議はストップしてしまいました。

今回は、立法に関する基礎用語を整理してみたいと思います。

1.議員立法

法律は国会で作られることは皆さんご存知だと思います。

国会は、いわば常識の範疇です。

国会は衆議院と参議院で構成され、そのメンバーは国会議員です。

「法律は国会で作るのであって、そのメンバーは議員なのだから、『議員立法』というのは同義反復的であり、わざわざそう言う意味はどこにあるのか?」と思われるかもしれません。

しかしそれがあるのです。

法律を作るには、議論の対象となる「法律案」を作る必要があります。

その案を作り国会に提出するところとしては内閣と国会議員があります。

このとき、内閣提出の法律案を閣法というのに対し、国会議員が提出するものを「議員立法」というのです(所属により、衆法、参法と分かれます)。

ところで法律案を作るためには、法的部分を中心に高度の専門知識が必要であり、国会議員メンバーがそれだけの力量を備えているかというと、一般的にはそうとは言えないとされています。

そのため、法律案のうち、提出された上で成立にたどり着くものの大半は閣法であり、「議員立法」はごく少数であるのが現実です。
※平成26年度通常国会では、閣法は81本提出のうち79本が成立しているのに対し、議員立法は75本中21本にとどまる。

提出数自体は遜色ないのが意外でしたが、成立数には明らかな差があります。

内容的には、議員立法には提出議員が特に関心をもっているテーマであって、個別トピック的なものが多いような印象があります。

2.閣議決定

閣法は、内閣で承認されてはじめて法律案となります。

この決定のことを閣議決定といいます。

閣議決定は全大臣の合意によってなされます。

一部でも反対があれば成立しないため、反対する大臣を辞めざるを得ないことになります。

3.委員会と本会

法律は国会で作られると言っても、あれだけの人数の議員全員が一堂に会して議論するのは現実的ではありません。

そこでもう少し小さいサイズの分科会において議論し、そのあとで議員全員による全体会議にもっていく手法がとられています。

全体会議のことを本会議というのに対し、分科会のことを委員会といいます。

派遣法の場合は、衆院と参院の双方に設置されるそれぞれの「厚生労働委員会」が所掌することになります。

4.議院内閣制と国会論戦

ところで、わが国の国家権力は司法、立法、行政が分離している三権分立というシステムによっていますが、国会と内閣は完全分離しているわけではなく、内閣は国会の信任の上に成立しています。

これを議院内閣制と言います。

国会で多数を占める党の意向で内閣のメンバーも決まります。

このような関係があるので、通常、与党と内閣とは一心同体的であり、閣議決定された法律案は、基本的には国会を通ることになります。

国会はもちろん重要な機関ですが、実際には閣議決定の段階で勝負はついているのであり、このため、国会論戦は空虚なものになりがちだと言われます。

空虚だということは、逆に言えば、成否を左右するのは議論自体ではなく、なにがしかの「事件」によることが多いことにつながります。

現行派遣法もそのような影響を受けてきました。

民主党政権時代における普天間問題や政治と金問題、現自民党・公明党政権における厚労省による法案誤記問題など、記憶に新しいところです。

ちなみに、アメリカの大統領制では、三権は完全に分離されています。

法律案を出すのは議会の仕事であって、行政府の長たる大統領といえども提出することはできません。

いわば「議員立法」だけなのです。

逆に大統領には、議会で成立した法案の発効を阻止する「拒否権」が与えられています。

派遣の仕事

今年10月1日に「労働契約申込みみなし制度」が施行されます。

派遣法改正法案が成立せずに、10月1日を迎えた場合の問題を「10.1問題」と呼んでいます。

労働契約申込みみなし制度とは、派遣先が派遣可能期間を超えて労働者派遣を受け入れていた場合等、違法状態が発生した時点で、派遣先が派遣労働者に対して、派遣元事業主における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申し込みをしたものとみなす制度です。

では、派遣法改正法案が成立せずに、みなし制度だけが施行された場合、何が問題となるのでしょうか?

今国会の審議の場で、厚生労働省側が国会議員に説明するために作った資料(不適切と指摘され既に変更済み)に記載されている2つのケースをご紹介します。

<ケース①>26業務だと思って3年以上受け入れていたら、実は26業務ではないと認定された

<ケース②>3年以上26業務に従事する派遣労働者が、派遣先に直接雇用されたいため、26業務以外の業務を故意に行う。

いずれも、期間制限違反の事例です。

これらのケースで、派遣先が労働契約申込みみなし制度の適用がないと主張する場合、労働契約申込みみなし制度の発動を認定してもらうため、派遣労働者が裁判所に訴え、訴訟が乱発する恐れがあると懸念されています。

それを避けるためには、派遣元・派遣先が、この制度の内容をよく理解した上で、10月1日以前に、違法状態をなくしておく必要があります。

違法状態には、期間制限違反のほかに、禁止業務への派遣受入、無許可・無届事業者からの派遣受入、いわゆる偽装請負の場合があります。

最近特定労働者派遣事業者が常用雇用以外の労働者を派遣して行政指導を受けるケースが増えていますが、これは無許可派遣事業者からの受入となり、労働契約申込みみなし制度の対処となるため、派遣先は、特定労働者派遣事業者との取引状況をきちんと把握する必要があります。

派遣の仕事